
MacのテキストエディターからEPUB出力へ進むときに確認したいのは、本文がコピーできたかだけではありません。文字コード、出版用記法、画像の参照先、章順、目次対象、書誌情報が、出力工程まで意味を保てるかを確認します。
これらが失われるのは「別ソフトへ渡せば必ず」ではありません。受け渡し先が記法を解釈しない、原稿以外の設定を渡していない、フォルダ構成を変えた、といった条件で起こり得ます。この記事では、テキストエディターからEPUB出力へ渡す情報を6つの成果物として整理し、同じ環境を使う場合は確認済みの原稿記法をEPUBへ変換し、取り残しを検査するところまで進めます。
成果物1:原稿本体と文字コード
最初の成果物は原稿ファイルです。ただし、ファイルだけでなく次も記録します。
- 文字コード:UTF-8、Shift_JISなど
- 改行コード:LF、CRLFなど
- 原稿形式:txt、mdなど
- 正本の場所:どのファイルを修正対象とするか
受け渡し時に文字コードを指定しないと、受け手が別の読み方で開く可能性があります。一方、正しい文字コードで読める環境へ渡すなら、受け渡しただけで文字が変わるとは限りません。危険なのは、読み方を明示せずに解釈を相手任せにすることです。
成果物2:出版用記法の対応表
ルビ、圏点、改ページ、画像は、プレーンテキストの本文とは別に「どう解釈するか」が必要です。
rune Studioで検証した記法には、次があります。
- ルビ:
|背負い袋《せおいぶくろ》 - 圏点:
《《海》》 - 改ページ:
《《|Page Break|》》
ルビや圏点は日本語組版で重要ですが、改ページや画像参照そのものは日本語だけの概念ではありません。「日本語原稿にしかない印」とひとまとめにはしません。
受け渡し先が同じ記法を解釈するなら、そのまま渡せます。解釈しないなら、先に変換規則を決めます。最も避けたいのは、記法が本文として残ったままEPUBへ入ることです。
同じ環境なら、原稿記法からEPUB検査まで完了する
rune Studioを使う場合は、6つの成果物を別ソフトへ渡す前に、次の経路を同じ作業環境で完了できます。
- 正本の原稿へ、確認済みのルビ、圏点、必要な改ページの記法を置く
- 作品情報、原稿の順番、表紙など、今回のEPUBに必要な入力をそろえる
- その原稿からEPUBを書き出す
- 出来上がったEPUBを検査し、記法の取り残し、画像の欠け、空のページを確認する
操作検証では、|背負い袋《せおいぶくろ》 がEPUBのルビ要素へ変換され、《《海》》 に圏点用の処理が入りました。正常な検証用EPUBでは記法の取り残しが0件でした。画像を欠けさせた別の検証では欠けた参照が名指しされ、空のページも一覧として返りました。
この経路なら、原稿の記法を別の本文コピーへ移し替えるためのソフトは要りません。原稿へ指示を置く、同じ原稿からEPUBへ変換する、出来上がりを検査するまでを一つの環境で続けられます。販売先での受理や端末ごとの表示一致は別の確認です。
成果物3:画像フォルダと参照関係
本文画像を含むなら、原稿ファイルだけを渡しても足りません。画像ファイルと、原稿から画像までの相対的な位置関係を一緒に保ちます。
最低限、次をそろえます。
- 原稿ファイル
- 画像フォルダ
- 原稿内の画像記法
- 表紙画像
- 画像の利用箇所一覧
rune Studioで書き出したファイルを検査した操作記録では、画像の欠けを確認できました。ここでは移動や改名に伴う自動更新までは製品仕様として断定せず、受け渡し後に原稿の参照先と画像ファイルを照合します。
受け渡し前には、フォルダ構成を保ったまま複製し、別の場所で開いて画像が見つかるか確認します。
成果物4:章順と目次対象
ファイルが全部そろっていても、読む順番が伝わらなければ同じ本にはなりません。章順と、「本文には入れるが目次には載せない章」を分けて記録します。
受け渡し用の一覧には次の2列を持たせます。
- 読む順番
- 目次へ載せるか
ファイル名の番号だけでは、この2つを表現しきれません。
成果物5:作品情報と巻情報
作品名や作者を本文の先頭に書いても、EPUBの書誌情報へ自動で入るとは限りません。原稿とは別に、作品情報と巻情報を渡します。
受け渡し先の入力欄に合わせ、作品名、作者、言語、書字方向、版、発行日、表紙など、今回必要な値を一覧にします。ここではRune Studio固有の設定名や必須項目とは断定せず、受け手が出力に必要とする項目を事前に合意することを完了条件にします。
成果物6:受け入れ確認の記録
最後に、受け手が何を確認したら受領完了かを決めます。おすすめは次の順です。
- 原稿の文字コードと改行コードを確認する
- ルビ、圏点、改ページ、画像のサンプル箇所を確認する
- 章順と目次対象を照合する
- 作品情報と表紙を照合する
- EPUBを書き出し、記法の取り残し、画像の欠け、空のページを検査する
- Kindle Previewerで表示とリンクを確認する
受け渡しが成功したかは、コピー操作ではなく、この受け入れ確認で決まります。
同じ環境から出力する場合
原稿の編集とEPUB出力を同じ環境で行う場合も、6つの成果物が不要になるわけではありません。原稿と制作メモが、その成果物を保持する場所になり、確認済みの記法からEPUB変換と取り残し検査までを同じ場所で続けられるという違いです。
外部の編集者や別の制作環境へ渡す必要が出たら、同じ6項目を受け渡し一覧へ書き出します。これなら、別ソフトを探すかどうかより先に、何を保つ必要があるかを判断できます。
まとめ
- 受け渡しで情報が失われるかは、相手の解釈と渡した成果物で決まる
- 原稿だけでなく、文字コード、記法対応、画像、章順、書誌、受け入れ確認をそろえる
- ルビや圏点と、改ページや画像参照を「日本語固有」と一括りにしない
- 同じ環境では、確認済みの原稿記法をEPUBへ変換し、記法の取り残し・画像の欠け・空のページを検査する
- 原稿と制作メモで6つの成果物を保持し、別環境へ渡す必要が出たときも同じ一覧を使う
まず短い正本原稿へ確認済みの記法を置き、同じ環境からEPUBを書き出して取り残し検査までを1周してください。そのうえで6項目を1枚に書き出します。空欄があれば、別環境へ渡す前に決めるべき情報がそこにあります。


