
EPUBのメタデータとは、作品名・著者名・発行者・発行日・言語・その本を見分けるための番号など、本文とは別に持っている本の身元の情報です。読書アプリの本棚に並ぶ書名、著者名での並べ替え、検索でその本が出てくるかどうかは、本文ではなくこの情報を見て決まります。
この記事では、作品・著者・発行情報の3つを軸に、何を入れるのか、入れた値がEPUBのどこへ書き込まれるのか、入れ忘れをいつ見つけられるのかを順に説明します。目次の作り方や、EPUBの中身の全体像は別の記事に譲り、ここは書誌情報の出どころだけを扱います。
個人出版で整理しておきたい6つ
EPUB 3では、本の身元の情報をパッケージ文書のmetadataへまとめます。規格上の必須項目は識別子・作品名・言語です。著者、発行者、発行日は任意項目ですが、個人出版の管理では次の6つを一緒に整理しておくと、改訂時に迷いにくくなります。
- 作品名:本棚に並ぶ書名。シリーズものなら、巻数を書名に含めるかどうかをここで決めます
- 著者名:ペンネームで出すなら、以後の巻もすべて同じ表記にそろえます
- 発行者:個人なら自分の名前やサークル名。空でも作れますが、奥付が寂しくなります
- 発行日:出した日。改訂を重ねるなら、版と一緒に管理します
- 言語:日本語なら日本語、英語なら英語。読書アプリの表示や区切りの判断に使われます
- 見分けるための番号:その本だけを指す番号です。ISBNを持っていない個人出版でも、重ならない番号が1つ必要です
ここで意外と抜けるのが、言語と、見分けるための番号です。本文づくりに気を取られていると、最後まで空のまま進んでしまいます。
手で書く場合は、テキストの決まりごとを覚えることになる
EPUBを手作りする場合、書誌情報は本文とは別のファイルへ、決まった書き方で書きます。作品名はここ、著者名はここ、と場所が決まっていて、書く順番や記号の付け方にも決まりがあります。
変換ソフトを使う手もあります。ただし、入力できる書誌項目や生成されるページは道具ごとに違います。使う道具に必要な欄がない場合は、別の工程で値を補う必要があります。
どちらも、やってできないことではありません。1冊だけなら、書き方を調べて写せば済みます。
実際に手間になるのは、書き足しではなく「二度手間」
つまずくのは、書き方そのものではありません。機械向けの書誌と、人が読む発行情報のページを両方作る方針にした場合、同じ値を別々に管理することになる点です。
EPUB規格が定める書誌は、読書アプリが読むパッケージ文書のmetadataです。読者が読む奥付は規格上の必須メタデータ保存先ではなく、制作者や道具が必要に応じて本文ページとして用意するものです。奥付も作るなら、metadataと共通する作品名・著者名・発行日を別の形式で書くことになります。
だから手作業でやると、こうなります。
- 一覧のほうへ、作品名と著者名と発行日を書く
- 奥付のページを別に作り、同じ作品名と著者名と発行日を、今度は読める文章として書く
- 発行日を1日ずらすことになり、2か所とも直す
- 片方だけ直し忘れる
改訂を重ねるほど、この直し忘れが増えます。読者が気づくのはたいてい奥付のほうなので、「本棚の情報は新しいのに、奥付だけ古い日付のまま」という食い違いが残ります。
もうひとつの手間が、入れ忘れに気づくのが遅いことです。作り方によっては、必要な値の不足を工程の終盤まで見落とすことがあります。書き出す前に検査できれば、原稿の修正と書誌の修正を切り分けられます。
rune Studioなら、書誌は1回入れれば両方に出る
rune Studioでは、作品名・著者・発行者・書字方向・出力するファイル名・言語を作品の情報としてまとめて設定し、発行日と版は巻ごとに持ちます。原稿を選んで書き出すと、機械が読む一覧と、読者が読む奥付の両方が、その値から一度に作られます。
実際に開発版を命令から動かして確かめました。作品名を「旅立ちの朝」、作者を「佐々木直也」、発行所を「disolo」、言語を日本語、巻の版を1.0、発行日を2026年9月5日として書き出したところ、EPUBの中の一覧には作品名・作者・発行日・言語・発行所・見分けるための番号が入り、奥付のページには次のような文章が自動で並びました。
- 作品名の見出し
- 「2026年9月5日 電子書籍 ver 1.0 発行」
- 「作者:佐々木直也」
- 「発行所:disolo」
- 著作権の表示
- 実在の人物・団体とは関係がない旨の断り
同じ値を2回入力してはいません。実際に発行日を2026年9月5日から2026年10月1日へ変えて書き出し直したところ、一覧の日付と奥付の日付が両方とも新しい日付になりました。
ひとつ気づいた点があります。版の番号を1.0から1.1へ上げて書き出したところ、奥付には前の版の行が残り、新しい版の行が下に足される形になりました。改版を重ねると奥付に発行の履歴が並びます。意図した動きかどうかは確かめていないので、改版する前に一度書き出して奥付を見ておくと安心です。
言語の設定は、奥付の書き方そのものを変えます。言語を英語にして書き出したところ、奥付の見出しが「Colophon」になり、発行の行が「September 5, 2026 eBook ver 1.0 published」という英語の日付の書き方に変わりました。日本語のまま英語の本を出すと、ここが日本語の並びのまま残ります。
入れ忘れは、書き出す前に名指しで出る
書誌情報を空のまま書き出そうとすると、rune Studioは書き出しを止めて、足りない項目を名指しします。実際に空のまま検査を実行すると、作品名が入っていない、作者名が入っていない、出力するファイル名が入っていない、の3件が返り、EPUBは作られませんでした。その後、作品名・作者・発行所・言語・書字方向・出力ファイル名をシリーズ情報として設定して同じ検査を実行すると、指摘は0件になりました。
書き出す前に3件と分かれば、どの設定へ戻るかをその場で判断できます。販売先の受理条件は別の確認事項です。
向く人と、別の方法が向く人
向いているのは、同じ本を何度も出し直す人です。 誤字を直しては出し、加筆しては出す、という進め方をするなら、書誌の直し忘れが起きない作りは効きます。シリーズもので巻ごとに発行日と版が変わる場合も同じです。
1冊だけ、一度出して終わりなら、手作業も選択肢です。 すでに使い慣れた変換の手順があり、書誌も含めて管理できているなら、乗り換える理由は薄いでしょう。
なお、rune Studioで今回確かめたのは、設定した書誌値がEPUBのmetadataと製品が生成する奥付へ反映されること、そして入力不足3件が書き出し前に示されることまでです。EPUB全体の規格適合、販売先の審査、読書アプリごとの見え方は、この確認の範囲外です。そこは各販売先の最新の案内や、利用する読書アプリで確かめてください。
まとめ
- EPUB規格上の必須項目は識別子・作品名・言語。個人出版の管理では著者・発行者・発行日も一緒に整理する
- EPUBのmetadataと、任意の本文ページである奥付は別物。両方を作る場合は共通する値の食い違いに注意する
- rune Studioは作品情報からmetadataと製品が生成する奥付を作り、言語設定に応じて奥付の書き方も切り替える
- 空の状態では不足3件、全シリーズ情報の設定後は0件と、書き出す前に確認できた
次の一歩としては、いま手元にある原稿の書誌情報を紙に6行書き出してみてください。空欄が2つ以上あるなら、本文よりそちらを先に埋めるほうが早く一冊になります。 Rune Studioの製品ページを見る


