
リフローとは、文字の流れを読者の端末に任せる作りのことです。文字サイズを大きくすれば1ページに入る量が減り、画面が狭ければ改行の位置が変わります。だからページ番号は本ごとではなく、読者ごとに違います。
「◯ページを参照」が使えない理由も、目次が章単位である理由も、ここから出てきます。この記事では、その仕組みと、書き手が何を前提にすればいいのかを扱います。形式の選び方や、横書きの設定は別の記事に譲ります。
紙とリフローの違いは「誰がページを決めるか」
紙の本では、ページの区切りを決めるのは作り手です。組版の段階で1ページに入る文字数が決まり、印刷したら変わりません。
リフローでは、決めるのは読者の端末です。書き手が渡すのは文字の並びと、章の切れ目と、見出しの位置だけ。どこで改ページするかは渡していません。
これは制約に見えますが、目的があります。小さい画面でも読めるようにするためです。 文字サイズを変えられなければ、読める人が限られます。
位置を指す表現が、そのまま残ってしまう
紙の感覚で書いた原稿には、位置を指す表現が入ります。「35ページの図」「前ページの表」「見開きで比べてください」。
リフローでは、これらは意味を持ちません。 しかも、書き出しても警告は出ません。形式としては正しい文章だからです。
「本ごとに違う」ことの実際の影響
影響は、読者に伝える手がかりが減ることです。
紙なら「35ページ」と書けば1つの場所を指せます。リフローでは指せません。代わりに使えるのは、章と見出しです。「第2章の構成図」「『文字コードの選び方』の項」といった書き方になります。
そして、目次の役割が重くなります。 ページで位置を指せない以上、読者が本の中を移動する手段は目次からの移動が中心になります。目次に章が並んでいない本は、リフローでは特に読みにくくなります。
もう一つが図の位置です。紙なら図を任意の場所に置けますが、リフローでは文章の流れの中に入ります。図と説明文が別の画面に分かれることがあります。
rune Studioで、この前提に合わせて作る
rune Studioは、原稿からリフロー型のEPUB 3を書き出します。書き手が決めるのは、章の並び、見出し、書字方向です。
実際に開発版を命令から動かして確かめました。横書きに設定して書き出したEPUBを読むと、文字の流れは横書き、ページを送る向きは左から右と書かれていました。ページの区切りに関する指定は入っていません。 これがリフローということです。
目次は章と見出しから作られる
目次は原稿の見出しから作られます。実際に二章の原稿から書き出したところ、目次に第一章と第二章がそのまま並び、それぞれから本文へ飛べる形になっていました。
位置を指す手がかりが章と見出ししかないなら、見出しの付け方がそのまま読みやすさになります。 見出しを増やすほど、読者が移動できる場所が増えます。
目次に出す見出しの深さを絞れる
見出しを増やすと目次が長くなります。目次に出す見出しの深さを絞る設定があり、設定を読み出したところ、初期の値は最も深いところまで出す設定でした。細かい見出しを本文には置き、目次には大きい見出しだけを出す、という使い分けができます。
位置を指す表現は検索で数えられる
作業場を横断して探す機能があります。実際に確かめたところ、調べたファイルの数と一致件数が、ファイル名・行番号・その行の文章付きで返りました。「ページ」で一度探せば、直すべき箇所の数が分かります。
見出しの粒度をどう決めるか
リフローで読者が移動できる場所は、章と見出しだけです。だから見出しの数がそのまま、読者が本の中を動ける自由度になります。
目安を1つ挙げるなら、読者が「あの話はどこだったか」と探しそうな単位ごとに見出しを1つです。実用書なら、手順のまとまりごと。解説書なら、扱う対象ごと。小説なら章で足りることが多く、無理に増やす必要はありません。
見出しを増やすと目次が長くなりますが、目次に出す深さを絞れば本文の細かさは保てます。本文の見出しは読者が探すため、目次の見出しは読者が全体を眺めるため、と役割を分けて考えると決まりやすくなります。
向く人と、別の方法が向く人
向いているのは、文字が中心の本を作る人です。 小説、実用書、技術書、エッセイ。読者に文字サイズを選ばせたほうがいい本なら、リフローが向きます。
写真集や絵本は別です。 ページの見た目そのものが作品なら、レイアウトを固定する形を選んでください。
なお、確かめたのはEPUBのファイルが作られることと、目次が作られることまでです。端末ごとにどう改ページされるかは確かめていません。 販売先の要件も変わるので、最新の案内を確認してください。
まとめ
- リフローは、ページの区切りを読者の端末に任せる作り
- ページ番号は読者ごとに違うので、位置は章と見出しで示す
- 目次の役割が重くなるので、見出しの付け方がそのまま読みやすさになる
- 位置を指す表現は書き出しても警告が出ない。原稿の段階で検索して数える
次の一歩として、いまの原稿の見出しを数えてください。1章あたり見出しが1つしかないなら、読者が移動できる場所も章の数しかありません。


