
Macのテキストエディタ1本でEPUBまで進めたいなら、確認するべきなのは機能の数ではありません。原稿を正本にしたまま、長文編集、推敲用の表示、EPUB 3出力、出力後の内部確認までを同じ作業単位で往復できるかです。
この記事では、rune Studioで実際に確認できた範囲だけを使い、「1本で済む」の完了条件を工程順に示します。表紙画像の制作、販売先固有のプレビュー、KDPへの登録は別工程です。
先に「1本で済む」の範囲を決める
この記事での完了条件は、次の5つです。
- 日本語の長文原稿を編集できる
- 画面を分け、原稿と確認対象を並べられる
- 同じ正本を保ったまま、横書きと縦書きの表示を使い分けられる
- 確認済みの原稿記法をEPUBの形へ変換できる
- EPUB 3を書き出し、出来上がったファイルの中身を調べられる
rune Studioの対象環境はmacOS 13以降です。iPadで同じ工程が完結するという意味ではありません。また、Kindle Previewerでの確認やKDPへのアップロードまで「1本」に含めません。
工程1:原稿を正本にする
最初に決めるのは、どの原稿を直せば次のEPUBへ反映されるかです。修正対象は原稿、EPUBは原稿から作る成果物と分けます。
EPUBを直接直しても、その修正を原稿へ戻さなければ次の書き出しで消えます。初稿用、推敲用、EPUB用と本文を複製するのではなく、1つの正本へ修正を集めます。書き出し直すたびに同じ原稿へ戻れることが、1本運用の土台です。
工程2:編集と推敲の画面をつなぐ
rune Studioでは、画面の分け方を追加し、2列にして連動させる操作を確認しました。これにより、本文と確認用の表示を同じ作業中に並べられます。
この工程の完了条件は、画面の数ではありません。片方で原稿を直したあと、もう片方で同じ箇所を確認し、修正先が正本の原稿から外れないことです。資料を別の窓に置く場合も、本文の修正先だけは固定します。
工程3:確認済みの出版用記法だけを使う
操作検証では、次の記法を原稿へ入れ、EPUBの形へ変換されることを確認しました。
- ルビ:
|背負い袋《せおいぶくろ》 - 圏点:
《《海》》
書き出した本文では、ルビが対応する要素へ変換され、圏点にも出力用の処理が入りました。この記事で製品挙動として扱うのは、この確認済みの範囲です。改ページ、本文画像、書誌、奥付などの個別仕様までは、ここで一括して断定しません。
大切なのは、出版用の指示を別の本文コピーへ移さないことです。原稿の中に確認済みの記法を置き、書き出した結果と対応させると、修正と変換の戻り先が1つになります。
工程4:横書きと縦書きで推敲する
確認用の表示を作り、横書きと縦書きを切り替えられます。原稿を直しながら別の配置で読み直せるため、EPUBを作る前の推敲に使えます。
縦書きで書き出した検証では、「12歳」の2桁に縦中横の処理が入り、横書きでは入りませんでした。これは確認した2桁数字の例です。すべての数字や記号について同じ結果を保証するものではないため、作品内の代表箇所を選んで確認します。
編集画面の表示は、販売先での最終表示の証明ではありません。ここでは気になる箇所を見つけ、書き出し後の内部確認とKindle Previewerへ引き継ぎます。
工程5:EPUB 3を書き出し、内部を確認する
rune StudioはEPUB 3出力を備え、書き出したファイルの中身を調べられます。出力が完了したことと、出来上がりを確認したことを分けて記録します。
この工程では、少なくとも次の対応を自分で確認します。
- 今回修正した原稿から書き出したか
- ルビや圏点の代表箇所が変換されているか
- 内部検査を実行し、結果を保存したか
内部検査が問題を示さなくても、KDPの受理や端末ごとの表示一致までは保証しません。公開前にはKindle Previewerを使い、本文の流れと代表箇所を別に確認します。
修正の戻り先を固定する
問題が見つかったら、原因に応じて戻ります。
- 誤字や表現 → 正本の原稿
- ルビや圏点 → 原稿内の記法
- 推敲時の見え方 → 確認用表示で再確認
- 書き出した内容 → 原稿と出力結果を照合して再出力
- Kindle Previewerだけの差 → EPUB内部と販売先側の表示を分けて調査
最後は必ずEPUBを作り直し、内部確認をもう一度行います。修正、再出力、再確認の戻り先が同じであることが、1本運用の実質的な利点です。
1本にしない工程も残す
表紙画像を編集する、固定レイアウトを組む、販売先の画面で登録する、といった作業には別の道具が要ります。必要な外部工程まで消そうとすると、この記事の「1本」の範囲が曖昧になります。
原稿編集から検査済みEPUBまでを1本にし、販売先固有の確認は外に残す。この境界なら、製品が確認できていない領域を保証せずに工程を短くできます。
まとめ
- 1本で済むかは、原稿編集から内部確認までの完了条件で決める
- 原稿を正本にし、修正を別コピーへ分散させない
- 確認済みのルビ・圏点記法と、横書き・縦書きの表示を推敲へ使う
- EPUB 3出力後は内部を確認し、Kindle Previewerを別工程として残す
まず短い原稿で、修正、表示切り替え、EPUB出力、内部確認までを1周してください。同じ原稿へ戻って2周目を続けられれば、原稿からEPUBまでの工程を1本にできます。


