
Mac向けのEPUB作成ツールを選ぶときは、出力ボタンの多さより、手元の原稿をどの形で受け取るかを確認してください。原稿形式、見出し、ルビなどの記法、段落と空行、画像パス、章順の6項目を「入力契約」として書き、代表一章を通すと変換負担が分かります。
完成時にEPUB 3を作れるツールでも、入力前に全章の見出しやルビを書き直す必要があれば、長編では導入コストが大きくなります。反対に、現在の原稿規則と合えば、同じ出力機能でも作業は短くなります。
この記事は、プレビューや表紙など一般機能の総合比較ではありません。既存原稿と作成ツールの入口が合うかだけを判断します。
入力契約は「受け取れる条件」を一枚にする
入力契約は、ツールの説明を写す表ではありません。現在の原稿が持つ条件と、候補ツールが要求する条件を左右に並べる表です。
「対応」と書かれていても、直接開けるのか、コピー&ペーストが必要か、事前変換が必要かで負担は違います。各項目を次の四段階で記録します。
- A: 原稿を複製するだけで受け取れる
- B: 巻全体へ機械的に適用できる一回の変換が必要
- C: 章ごとの手直しや目視確認が必要
- D: 情報を保持できない、または変換方法が不明
Cが多い候補は、短編では使えても長編で負担が増えます。Dが必須情報に付いた候補は外します。
1. 原稿形式
現在の正本が.txt、Markdown、DOCX、Pages、独自形式のどれかを書きます。候補が「テキスト対応」でも、特定拡張子を直接開けるとは限りません。
直接読めない形式は、書き出し時にコメント、脚注、変更履歴が消えないかを別途確認します。本文だけをプレーンテキストへ移せればよいのか、装飾情報も必要なのかを先に分けてください。

2. 見出しの規則
章見出しを一行目、記号、Markdownの#、専用スタイルのどれで表すかを確認します。ツールが章を認識する規則と合わなければ、目次や改ページへつながりません。
代表一章で、見出し本文とナビゲーションに期待した文字列が入るかを見ます。見出しだけ手直しする場合も、全章へ一括適用できる規則ならB、章ごとの判断が必要ならCです。
3. ルビ・強調・区切りの記法
ルビ、圏点、太字、中央揃え、リンク、改ページなど、実作品で使うものだけを一覧にします。候補が独自記法を使う場合、既存記法から安全に変換できるかを一種類ずつ試します。
「プレビューで見えた」だけでなく、生成EPUBに記法文字が残っていないかも確認します。使わない高度な記法を比較表へ増やす必要はありません。
4. 段落・字下げ・空行
段落頭の全角空白、空行による場面転換、連続空行、ハード改行の扱いを確認します。ツール側で空行を間引く設定がある場合、現在の原稿規則と重ならないかを見ます。
同じ見た目でも、原稿自体を書き換えるのか、出力時だけ整えるのかで正本への影響が違います。入力契約に処理場所を書いてください。
5. 画像とパス
本文画像を使う作品は、原稿から画像を指す方法を確認します。絶対パスはMac内の場所が変わると切れやすいため、原稿または制作フォルダを基準にした相対参照が扱えるかを試します。
代表画像を一枚入れ、複製フォルダから出力して欠落がないかを確認します。表紙の選び方は別の設定ですが、本文画像と同じ素材置き場を使うなら所在を記録します。
6. ファイル分割と章順
一巻一ファイル、章ごとの複数ファイル、部と章の階層など、現在の分け方を書きます。候補ツールで選択順が読み順になるのか、別の章リストを持つのかを確認してください。
出力前に原稿数、章数、順序を表示できれば、生成前の取り違えを減らせます。目次の詳細な編集方法ではなく、既存の章構成を入口で失わないことがここでの目的です。

代表一章からplan、validate、出力へ進む
入力契約を書いたら、原本を変えずに代表一章と必要な画像を複製します。候補の規則へ合わせる変更をすべて記録し、変更数と目視確認時間を測ります。
出力計画や事前検査がある場合は、原稿数、章順、不足値、参照エラーを確認します。最後に試験EPUBを生成し、章、目次、画像、記法残りを調べます。
AやBが中心で、Dが必須項目にない候補なら全巻テストへ進めます。Cが多い場合は、一章の手直し時間を章数倍してから採用を判断してください。
rune Studioの入力範囲で確認したこと
rune Studioの現行Mac版では、検証した.txt原稿を選択し、二ファイルを二章として順序指定してEPUBを生成できました。planとvalidateで、出力前にファイル数、章数、順序、issuesを確認できます。
全機能一覧には、ルビ、圏点、太字、揃え、リンク、画像、改ページなどの編集記法があります。画像パスは原稿ファイルの場所を起点に解釈し、ファイルブラウザで移動・改名した際に参照を書き換える機能も記載されています。
生成後の検証では二章、nav/NCX、missingImages 0、leakedNotation 0を確認しました。DOCXやPagesの直接読込、他社独自記法の自動変換、すべての記法の組合せは今回確認していません。
結論:出口より入口の変換量で選ぶ
EPUB作成ツールは、同じEPUB 3出力を掲げていても、既存原稿を受け取る条件が違います。原稿形式、見出し、記法、段落・空行、画像、章順の6項目を入力契約へまとめてください。
代表一章を複製し、必要な変換を記録して、出力前計画と生成物を確認します。全章を書き直さず、必須情報を失わず、変更を規則化できる候補が、現在の原稿に合うMac向けツールです。


