
EPUB Metadata Editorを使うときは、入力欄を上から埋めるだけでなく、正本となる書誌メモと生成後のEPUBを照合してください。作品、責任表示、言語と書字方向、巻と版、発行情報の5グループに分けると、似た値の取り違えを防げます。
メタデータの入力漏れは、本文を読んだだけでは気づきにくい問題です。前巻の題名が残る、著者表記が揺れる、横書きのつもりで縦書き設定が残るといった事故は、出力前後の二回確認で減らせます。
この記事は目次や表紙の作り方、既存EPUBを直接修復する方法ではありません。原稿から新しいEPUBを生成する前のメタデータ照合に絞ります。
まず一枚の書誌メモを正本にする
編集画面へ直接入力する前に、今回の巻で確定した値を一枚のメモにまとめます。前巻の設定を複製して使う場合も、変更しない項目を含めてすべて書き直してください。
メモには「入力値」だけでなく「確認者」と「確認日」を付けます。複数人で作る場合、著者の公開名と契約上の氏名を混ぜないよう、EPUBに表示する値を明示します。
ファイル名に使う短い英数字と、読者に見せる作品名も分けます。同じである必要はありませんが、どちらを変更したか追えるようにします。
5グループを順番に照合する
1. 作品の識別
作品名、シリーズ名、巻の表示を確認します。タイトルに巻数を含めるのか、生成時に巻番号を付けるのかを二重にしないことが重要です。前巻を複製した場合は、最初にここを書き換えます。
出力ファイル名は読者向けタイトルとは別に、半角英数字など運用しやすい形を決めます。巻、版、日付のどれを含めるかを統一すると、古い出力との混同を防げます。
2. 責任表示
著者名と、必要なら出版社名を確認します。ペンネームの空白、中黒、英字の大文字小文字まで正本と照合してください。
同じ人物でも、表紙、奥付、ストア商品情報で表記を変える運用があります。EPUB内部へ入れる値を一つ決め、別用途の表記を誤ってコピーしないようにします。
3. 言語と書字方向
本文の主言語と、横書き・縦書きの設定を確認します。日本語作品だから必ず縦書きとは限りません。横書きの実用書や会話主体の作品もあるため、前巻やテンプレートの値をそのまま使わず、今回の本文で決めます。
書字方向はメタデータだけでなく、ページ進行やCSSへ影響する場合があります。縦書き作品は、ここで値を確認した後、完成EPUBの表示も別に確認します。
4. 巻と版
巻番号と版を分けます。巻番号はシリーズ内の位置、版は同じ巻の改訂を表します。誤字修正版を新しい巻として扱わないよう、命名規則を先に決めてください。
初版を1.0、軽微な修正を1.1とするかなどの規則は制作側で統一します。ツールが値を保存できても、版の意味までは自動で決めません。
5. 発行情報
発行日と、必要な場合は出版社を確認します。予定日と実際の公開日が違う運用では、どちらをEPUBへ記載するかを制作ルールで決めます。
ストアの商品説明、価格、販売地域、税務情報などはEPUB制作ツールの書誌設定とは別です。Metadata Editorの入力欄にないストア固有情報まで一つの表へ詰め込まず、登録工程のチェックリストに分けます。

出力前と出力後で役割を分ける
入力後は、出力前計画で作品設定、巻設定、原稿数、章順を確認します。この段階では「入力したつもり」をなくすことが目的です。値が不足している、形式が不正であると表示されたら、EPUBを作る前に戻します。
生成後は、EPUB内部のtitle、creator、language、identifier、書字方向などを確認します。すべての入力欄が同じ名前でOPFへ入るとは限りません。発行日として保存した値と、生成日時を示すdc:dateを混同しないよう、実際の出力を見ます。
さらに実リーダーで、タイトルページや奥付に見せたい表記を確認します。内部値の存在と読者画面の表示は別の確認です。

rune Studioで検証した範囲
rune Studioの現行Mac版では、作品名、著者、出版社、書字方向、出力名などの作品設定と、巻番号、版、発行日などの巻設定を扱えます。CLIでは出力前のplanとvalidateも利用できます。
検証作品では「青い鍵」、著者「検証者」、巻1、版1.0、縦書きで二章のEPUBを生成しました。OPFにはdc:title、dc:creator、dc:language、UUIDのidentifier、vertical-rlの書字方向が入りました。dc:dateは検証出力では生成日時でした。
出版社入力のOPF反映、ISBN、ストア固有情報は今回確認していません。既存EPUBの内部を開いて値を書き換える用途でもありません。
結論:5グループを前後二回で照合する
EPUBメタデータの入力漏れを防ぐには、作品、責任表示、言語と書字方向、巻と版、発行情報を一枚の正本へまとめます。出力前は設定と計画、出力後はEPUB内部と表示を確認してください。
入力欄を埋めた事実ではなく、正本の値が生成物へ届いたことを確認して完了です。目次、表紙、ストア登録は別のチェックリストに分けると、メタデータ確認の役割がぼやけません。


