
EPUBファイルの作り方で重要なのは、最初から全八章を完成扱いにすることではありません。第1章から2,500字の標本を作る一周目で設定と判定基準を固定し、全八章を生成する二周目では、増えた範囲の差分と、標本から維持すべき条件を分けて確認します。この記事では、ルビ・2桁数字・場面区切りを含む縦書き小説を例に、入力正本、生成物の識別、二周目の比較、停止条件を具体化します。KDP登録、価格、販促、全リーダー保証は扱いません。
一周目の標本は「第1章・約2,500字・午前10時・本当!?・ルビ・場面区切り」です。二周目は第1章から第8章までを対象にし、章数と本文量が変わります。この変化を欠陥と混同せず、縦書き、右開き、数字、記号、ルビが維持されたかを差分表で判定します。
一章標本の一周目で基準を固定する
第1章を作業用に複製し、標本名を「sample-ch01-r1」のように付けます。本文には、縦書きの列方向を見る文章、午前10時の2桁数字、会話末尾の「!?」、親文字と読みの対応が分かるルビ、場面区切りを一つずつ入れます。内容は短くても、出力時に確認したい要素を省きません。
一周目の判定表には「対象」「期待する状態」「実際の状態」「戻り先」を置きます。たとえば本文は「列が右から左へ進む/実際の表示/縦書き指定または本文へ戻る」、数字は「10を意図したまとまりで読める/実際の表示/数字の処理へ戻る」、ルビは「親文字と読みが対応する/実際の表示/ルビ記述へ戻る」とします。設定を決めたことと、表示で確認できたことを別の欄に残します。
生成物を識別して受け渡す
一周目の入力正本、作業用複製、生成したEPUBを同じ名前で扱わないようにします。記録には「入力:本文正本の版名」「処理:縦書き・右開き・数字・記号・ルビの設定値」「生成物:sample-ch01-r1.epub」「検査日」「判定」を書きます。ファイル名を上書きしただけでは、後からどの結果を基準にしたか分かりません。
生成物を受け渡すときは、作業票の生成物名と実際のファイル名を照合します。新しいEPUBが古い同名ファイルに見える場合は、本文や設定を直す前に出力名と保存場所へ戻ります。本文の誤字は入力正本へ、設定の違いは設定欄へ、生成物の取り違えは識別欄へ戻す、と原因ごとの戻り先を固定します。
全八章の二周目は差分だけを見る
一周目で基準を記録したら、第1章から第8章までを同じ処理順で生成し、二周目の成果物を「full-8ch-r2」のように別名で保存します。ここで見るべき差分は、章数が1から8へ増えたこと、各章の開始位置が増えたこと、章ごとのルビ・数字・場面区切りが新しく発生したことです。これらは二周目に固有の確認対象です。
差分表には「項目」「一周目の基準」「二周目の実際」「差分の種類」「判定」を置きます。差分の種類は「追加」「維持」「消失」と書きます。たとえば章数は追加、縦書き指定は維持、ある章のルビが消えたら消失です。第1章の結果を全八章へコピーして合格にせず、追加された第2章〜第8章でも代表箇所を確認します。
二周目の検査対象を一周目と分ける
二周目では、まず新しく増えた範囲を見ます。第2章の「午前10時」、第5章の「!?」、第8章のルビのように、章ごとに一つの代表箇所を決めます。次に、一周目から維持すべき条件を確認します。本文の縦書き、ページの右開き、設定値、生成物名、場面区切りの扱いは、章数が増えても変えてはいけない条件です。
一周目の判定が合格でも、二周目の生成物が同じ結果だとは限りません。二周目の表には一周目の結果を転記するのではなく、実際に見た章、箇所、表示、成果物名を書きます。第1章で設定が維持され、第6章だけ記号が崩れたなら、全八章を作り直す前に第6章の本文・設定・出力対象へ戻ります。
停止条件と戻り先を決める
二周目は、次の状態になったら合格判定を止めます。
- 一周目と二周目の生成物を、名前や記録で区別できない。
- 追加・維持・消失のどれに当たる差分か説明できない。
- 第1章で決めた設定が、別章で変わったのか未確認のままになっている。
- 本文を直すのか設定を直すのか、戻り先を一つに決められない。
生成物を区別できない場合は識別欄と保存名へ戻ります。差分の種類が説明できない場合は、一周目と二周目の対象範囲を並べ直します。設定が変わった場合は設定値と該当章へ、本文だけが違う場合は入力正本の該当章へ戻ります。未確認の章を「一周目と同じ」とみなして先へ進まないことが停止線です。
Rune Studioが向く条件を絞る
現行Mac版の公開機能資料では、Rune Studioは「vertical-rlの縦書きプレビューと、右開き・縦中横・記号処理を含むEPUB 3出力を備える」という機能範囲が確認できます。そのため、一章標本と全八章を二周に分け、設定と表示を記録する作業を試す候補として記載できます。
ただし、これは公開資料で確認した機能範囲であり、上の標本が一周目・二周目とも合格した実測結果ではありません。再生成後の表示、KDP登録、全リーダーでの一致も保証しません。製品を試す場合は、公開資料の範囲と、入力正本・生成物名・差分表で自分が確認した結果を分けて残します。

最初の標本を用意する
まず第1章を複製し、「午前10時」「本当!?」「ルビ」「場面区切り」を含む約2,500字の標本を一つ作ります。一周目の生成物をsample-ch01-r1、全八章の生成物をfull-8ch-r2のように識別し、二周目の表には追加・維持・消失を記録します。第6章で表示が変わったときは第6章の入力、設定、生成物のどこが違うかへ戻り、未確認のまま全体を合格にしません。
この二周を分けると、標本で決めた基準と、本番範囲が広がったことで新しく起きた差分を同じものとして扱わずに済みます。EPUBファイルを作る作業は、生成できたかだけで終えず、どの成果物を、どの章の、どの確認結果として残したかまで識別して初めて次の修正へ進めます。


